真夜中から降り始めて午前3時には既に真っ白。
思わず家を飛び出して雪の上を歩いた。
わずかな街灯の下、全てが白の世界、それが何ともいい!
真夜中、誰もまだ歩いていない未踏の雪原を歩く。
それが道路であっても、その上を踏みしめて歩く時は
訳もなくとにかく心がときめき、弾んで嬉しくなってしまうのである。
夜もすがら大きな池の周りを何度も何度も巡りながら・・・
たっぷりとたっぷりと雪味を楽しむ。
音もなくしんしんと降り続くのである。
仰げば、遥かな虚空、天空からふわり
静かに静かに舞い踊りながら落ちてくる。
見ていると吸い込まれそうな不思議な感覚に包まれる。
深い神秘の世界に引き込まれてしまう。
誰もいない静寂の闇の中。
枯草も常緑樹も赤い屋根も何もかも
一切を白に、白銀の世界にひたすら染め抜いていく。
どんな汚れやアンバランスも全てを包み込む。
ただそれだけなのに・・・
ただそれだけで、全てを別次元の美の世界へ
清浄なる世界へと昇華させてしまう。
雪、それは地上を清めに来た天来の使者、静寂の司祭。
ただの自然現象なのだと言い切るのは
余りにも不遜過ぎではと、何かそう思えるほどに
ハッとするほど美しく感動的でさえある、その雪化粧。
どんな天才画家もこの全地上を白だけで塗り包む
この技法までは、きっと思いつかなかったことだろう。
至高の芸術家の妙技、神秘の自然、まさに神業である。